高松高等裁判所 昭和26年(ナ)5号 判決
原告 山本孝雄
被告 高知県選挙管理委員会
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は被告が昭和二十六年九月八日なした原告の訴願を棄却するとの裁決はこれを取消す、昭和二十六年四月二十三日執行せられた高知県長岡郡長岡村長及び同村議会議員選挙は無効とする訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求原因として原告は昭和二十六年四月二十三日同時に執行された高知県長岡郡長岡村長及び同村議会議員の選挙における選挙人であるが右選挙に際し
(一)、第三投票所において選挙人川崎清子の名義詐称による二重投票がある。
(二)、右投票所において刑務所より仮出獄中の選挙権のない者に対して投票せしめた事実がある。
(三)、その他無権利者による投票及び詐称投票がある。
(四)、第三投票所において投票管理者は或る候補者の運動員を投票所内に立ち入らしめ代理投票席の前に右運動員がしばしば姿を現したことは選挙人に対する一種の誘導であり、これに対して事務従事者より投票管理者に抗議をしたにも拘らず投票管理者は何等適当な措置を講ぜずこれを黙認した。
(五)、同村選挙管理委員会は第一投票所の投票管理者を北村要馬に、第三投票所投票管理者を吉村雅男に決定していたが、その後第一投票所投票管理者は何等変更理由がないにも拘らず細木似に変更し、又第三投票所投票管理者を山岡泉に変更しこれ等を告示した後委員会を招集してこれを承認議決しているがこれは或種の候補者に有利な結果を与えたものである。
以上は選挙の規定に違反し選挙の結果に異動を及ぼす虞がある故原告は被告に対し訴願をなしたところ昭和二十六年九月八日棄却されたのでその裁決の取消並びに選挙無効の判決を求めるため、本訴請求に及んだと陳述し被告の抗弁(事実)を否認した。(立証省略)
被告代理人は主文同旨の判決を求め答弁として原告の主張事実中選挙に当り氏名詐称投票無権利者投票の各一票存したこと及び右選挙に対し原告より訴願をなしたるも棄却の裁決のあつたことは認めるもその余は争う、氏名詐称投票及び無権利者投票は単に個々の投票の効力を争うものであり当選訴訟の原因となるも選挙の効力に影響を及ぼすものではなく原告主張の(五)の点についても投票管理者は当該選挙管理委員会が当該選挙の選挙権を有する者の中から諸種の事情を勘案して厳正公平に最も適当な人を選挙するものであり、従つて事情の変更その他により不適当と認められるに至つたときは当該選挙管理委員会において自由に解任し得るのは当然である。第一投票所において当初投票管理者と決定された者は老齢であり、且又村農業協同組合長の職にあつたので投票管理者としての職務執行に支障を生じてはと懸念されたため、又第三投票所において当初投票管理者として予定された者はその後本件選挙において立候補の意思を明確にしたためいずれもこれを変更した次第であつて、しかも変更後の投票管理者が選挙の自由公正を害するが如き不正行為をした事実は少しもない。また変更の手続についても長岡村選挙管理委員会が変更後の第一、第三投票所の投票管理者を含めた全投票管理者を昭和二十六年四月三日に告示し四月五日に開会された右委員会において変更に関する承認議決をしたのであるから第一、第三投票所の変更後の各投票管理者の選任行為が無効であるとはいえない。故に右投票立会人の変更は何等選挙の規定に違反し且選挙の結果に異動を及ぼす虞ある場合に該当しないと述べた。(立証省略)
三、理 由
昭和二十六年四月二十三日高知県長岡郡長岡村長及び同村議会議員選挙が同時に執行せられ、その選挙の効力に関し原告より被告に訴願をなし棄却の裁決のあつたこと及び選挙に当り氏名詐称投票、無権利者投票が各一票存したことは当事者間に争のないところである。
しかし原告主張の(一)、(二)、(三)の各点はひつきよう無権利者や不法投票者の投票の混入を理由として個々の投票の無効を主張するに帰するから斯る事由は単に当選の無効の事由たるに留まり選挙無効の事由とはならないから本件におけるが如く選挙の効力に関する訴訟において主張し得べきではない。
次に原告主張の(四)の事実についてはこれを認むべき証拠がないから原告の主張は採用することはできない。
最後に原告主張の(五)の事実について按ずるに投票管理者の解任は村選挙管理委員会において自由にこれをなしうるところであるのみならず仮りに投票管理者の変更について手続上瑕疵があつたとしても成立に争のない甲第五号証によれば本件投票管理者の変更についてはその後間もなく同村選挙管理委員会においてこれが承認の議決を経ていることが認められるからこれにより右瑕疵が補正されたと謂うべきである。
しかのみならず本件投票管理者の変更のため選挙の自由公正を害するが如き事由の存したことはこれを認むべき証拠がなく、又これがため選挙の結果に異動を及ぼす虞が生じたとも謂えないから原告の右主張も採用することができない。
よつて原告の請求は理由がないからこれを棄却すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 前田寛 近藤健蔵 萩原敏一)